溝入敬三コントラバス劇場

ミラノのたび【ミラノの旅】

 イタリアのペルージャという街に住む、現代音楽で大変著名なコントラバス奏者であらせられる大先生に会いに行ったことがある。しかしおかげで、無駄金と大量の時間を使わせられたあげく、散々な嫌がらせを受けて、やっとミラノに辿り着いたのは夜の8時頃だったろう。何としても宿を見付けねばならず、駅のインフォーメイション・センターに行って列に並んだ。しかし私の番になると、私の一人前で全てのホテルの部屋が満室になったと言う。この街の治安の悪さは心得ていたし、イタリアとはいえ、年の暮れではちょっと寒く、駅で眠るわけにもいかない。そんな私に係の人は、2食付き、しかも2皿のディッシュとドリンク付き、シャワー付きの特別の宿を紹介すると言ってくれた。それを断る理由はない。渡りに船と、教えられたとおりトラム(路面電車)に乗り、指定の停留所で降りて、そこで待っていた案内の男について行った。到着してみると宿の外見は普通のアパートのようだったが、入って行くと紛れもなく2LDKくらいのアパートの部屋だ。ダイニングルームには、すでに旅行者らしい若者が男4人、女3人くらいいた。
 その夕食は私が思い浮かべていたイメージとは違ったが、たしかに聞いていたとおり、パスタ(トマトソース)、焼いたチキンの2皿が並び、コーラの大きなペットボトルが出ていた。その料理は、停留所に迎えてくれた男が作ってくれた。まあイタリアであるから、それはそれで美味しかったが、皆で食事をしている最中に、あの駅の係員が仕事を終えて帰ってきた。そこは彼の部屋だったのである。
 宿泊代を彼に払うと、居る場所もなく、することもないので、寝室にぎっしり並べられたベッドでみんな寝た。トイレの水は流れなかった。シャワーはベランダの水道の蛇口に差してあるビニールホースのことだった。次の朝起きると、顔も洗わずに、一番の列車でミラノの街を離れた。私の初めてのミラノだった。
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by Keizo-MIZOIRI | 2007-10-17 18:23 | 想い出
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