溝入敬三コントラバス劇場

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煤(すす)まみれのベーシスト

 尾道の向島(むかいしま)は、島とは言いながらも、尾道桟橋に立つと目の前にあります。間にあるのは瀬戸内海ですが、昔或る外国人は、これを見て「日本には大きな河がないと聞いていたが、これは大きいじゃないか」と言ったとか。確かに地理を地図で知っていないと河にも見えるでしょう。現在は、フェリー以外に、大きな橋も架かって本土との行き来は便利になっていますから、島らしさは薄いかも知れません。僕は、思い浮かべるだけで、潮の香りが漂って来、みかん畑の風景が見えて来ますが、今はどうなっているでしょうか。

 D少年は、その向島に住んでいる高校生です。彼は、コントラバスが大好きで、お母様と一緒に、いつも僕の福山での演奏会を聴きに来てくれます。Y先生がお元気な頃は、福山の先生の所へレッスンに通っていました。Y先生は、僕の中学・高校の恩師です。僕の師匠です。残念なことに、つい先日お亡くなりになりましたが、先生に付いては、もう少し時間がたってから書こうと思います。
 さて大きなコントラバスに手足を生やすとD少年になります。楽器と同じく、立派な体格で、心優しく、もの静か。一昨年の夏には、不肖、私が基礎を教えたこともありますが、本当に良い子です。
 さてその彼が、この春、機関士の学校へ進学するという話を伺いました。夢は、コントラバスを弾くSL機関士だったらしいから。最初は、なんなんだろうね、何を考えているんだろうこの子は、と思ったのですが、良く考えてみると、これは最高のベスト・チョイス。コントラバスも蒸気機関車も大きくて力持ち、小回りが利かなくて不器用そうな所も、時代になんか迎合しないところもそっくりそのまま。絶妙の取り合わせです。これ以上の相性はないでしょう。
 十年後、二十年後の石炭や煤で真っ黒になった、竃の熱で日焼けした誇らしい顔が目に浮かびます。大井川鐵道かどこかで、田舎をシュッシュッと走っているのですね。そして家に帰ったら、爪の中まで真っ黒になった指で、愛用のベースを弾くんだね。
 格好良過ぎるぞD少年! 先生は嫉妬するぜ。いつか君の運転する蒸気機関車に乗る日を夢見ています。
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by keizo-mizoiri | 2008-02-14 20:45 | 音楽



コントラバス、音楽、その周辺のことなど
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